試験概要
これらの試験は、農薬の使用に伴って圃場から農薬等の公共水域における水中濃度を推定するための試験です。畑や果樹園等の非水田圃場に散布された農薬の一部は、ドリフトによって公共水域に混入するほか、傾斜地では強い降雨で発生する表流水によって、土壌とともに農薬が公共水域に流出することがあります。また、水田圃場では止水期間中でも畦畔浸透と鉛直浸透によって公共水域への農薬の流出が起こることがあります。この農薬の公共水域における水中濃度の推定は、段階的に行われ、第1段階ではデフォルト値などを用いた計算によって、最高次の第3段階では実圃場での試験、又は実圃場で得た係数(ドリフト率、表面流出率)を使って行います。
試験結果を基に標準シナリオに基づいたモデル式から水質汚濁に係る環境中予測濃度(水濁PEC)ならびに水産動植物毒性に係る環境中予測濃度(水産PEC)を推定します。一日許容摂取量ADIと人の飲水量から算出される水質汚濁に関する登録保留基準値を水濁PECが超える場合や、水産動植物への影響試験から得られる急性影響濃度AECに基づく水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準値を水産PECが超える場合は、登録が保留されることになります。
当研究所では、水田圃場使用農薬に関するPEC推定に必要な下記の試験を実施しています。
水質汚濁性試験および模擬水田を用いた水田水中農薬濃度測定試験
登録予定の最大使用方法で農薬製剤を模擬水田(ライシメーター)に処理し、表面水と浸透水中の有効成分と土壌代謝試験及び水中動態試験で同定された主要な代謝物・分解物を処理後2週間または最高濃度の1/10以下になるまで、継時的に定量し、その消長を明らかにします
主要機器・設備
- 高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)
- 高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)
- ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)
- 高速液体クロマトグラフ (DAD, UV, FL)
- ガスクロマトグラフ (FID, FPD, NPD, ECD)
- UV-VIS分光光度計
- フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)